中山 芳一(なかやま よしかず)
1976年岡山県生まれ、3児の父。岡山大学准教授。専門は教育方法学。
大学生のキャリア教育に加え、幼児から小中高生の非認知能力やメタ認知能力育成についても研究。新刊の『「やってはいけない」子育て 非認知能力を育む6歳からの接し方』(日本能率協会マネジメントセンター)のほか『学力テストで測れない非認知能力が子どもを伸ばす』(東京書籍)など、著書多数。
これからの時代に育みたい「非認知能力」
子どもたちが生きていくこれからの時代は「不安定・不確実・複雑・不明確な時代(VUCA時代)」といわれています。そこでますます必要になるのが「非認知能力」です。非認知能力とは、コミュニケーション力や忍耐力、自信、意欲、協働性など、テストで点数にすることはできない「生き抜くために必要な力」のこと。例えば、何かを夢中で楽しんでやっていれば「オプティミズム(楽観性)」が、逆に壁にぶつかってしまった場合は「忍耐力」や「レジリエンス(回復力)」が育まれるというように、体験で何かしらの非認知能力が育まれることが期待できます。さらに、壁にぶつかっても最後までやり抜くことができれば、それは子どもにとって大きな自信にもつながるでしょう。
体験止まりにせず、成長につなげるには?
そもそも体験は、親が子どもに一方的にやらせるものではありません。大前提として、子ども自身が「やりたい!」と思っていることが大切。自分がやりたいことや知りたいことのために得た知識は、深めやすく忘れにくいというメリットもあります。
また、体験したらそれで終わりにするのではなく、振り返りまでをセットで行うこと。「その体験は自分にとってどういう価値(いいところ)があったのかな」と、後から子ども自身がふり返って考えることで、自分の行動を客観的に見ることができ、体験が経験(学び)に変わり成長につながります。自分を客観的に見る力が育まれると、感情のコントロールができたり、よりよい選択ができたり……。それこそ、これからの時代を生き抜くうえで大切な力といえます。
そのためにおすすめの方法は、なんらかのアウトプットをすること。私がおすすめしているのは「日記」です。書く内容は「体験の内容」と「それについて思ったこと」だけでも十分。子どもが書きたくないという場合は、夕飯の時などに「今日はこういうことがあったね。どうだった?」など、会話の中でふり返りをするだけでもいいので、ぜひ意識してやってみてください。
体験というと特別なことと考えがちですが、子どもたちにとっては、日々のあそびも習いごとも家のお手伝いもすべてが体験です。目指すべきは、「親が良い体験をさせる」のではなく、さまざまな体験によって「子どもが自立・自走・継続できる」ようになること。大人は、やりやすい環境を整えてあげるなどサポートに徹し、子どもがやり抜く姿を見守ってあげましょう。